2013年2月23日土曜日

バルサルタン 降圧剤論文撤回

 
バルサルタン 降圧剤論文撤回 学会が再調査要請
京都府立医大のチームによる降圧剤「バルサルタン」に関する臨床試験の論文3本が、「重大な問題がある」との指摘を受け撤回された問題で、日本循環器学会が同大学長に対し再調査を求めていた。

■大学側は、捏造などの不正を否定する調査結果を学会に出していたが、学会は納得せず不信感を抱いている。

 
■問題になっているのはM教授(55)が責任著者を務め、09〜12年に日欧の2学会誌に掲載された3論文。
患者約3000人で血圧を下げる効果などが確かめられたとする内容だ。
昨年末、3本中2本を掲載した日本循環器学会が「深刻な誤りが多数ある」として撤回を決めるとともに、学長に事実関係を調査するよう依頼した。
 
しかし大学は調査委員会を作らず、学内の3教授に調査を指示。
「心拍数など計12件にデータの間違いがあったが、論文の結論に影響を及ぼさない」との見解を学会に報告した。

■学会はこれに対し、永井良三代表理事と下川宏明・編集委員長の連名で書面を学長に郵送した。
(1)調査委員会を設け、詳細で公正な調査をする
(2)結論が出るまで、M教授の声明文をホームページから削除する
——ことを要請している。
 
■毎日新聞の取材に、学会側は「あまりにもデータ解析のミスが多く、医学論文として成立していないうえ、調査期間も短い。大学の社会的責任が問われる」と説明。
大学は「対応を今後検討したい」とコメントを出した。
 
出典 毎日新聞 20113.2.21(一部編集)
版権 毎日新聞社

<私的コメント>
私は数十年日本循環器学会に所属しています。
しかし、今回のとうの事例は初めてす。
どちらに正義があるのか。
当事者が正しいのであれば反論すべきです。
そうでなければ大学の名を汚すことになってしまいます。
学長自体も、ちょっとアンチエイジングではそれなりの方ですよね。



2013年2月13日水曜日

頸動脈プラーク内出血リスクの血圧指標


どの血圧指標が頸動脈プラーク内出血リスクとなるか:ロッテルダム研究
オランダ・エラスムス医療センターのMariana Selwaness氏らは、前向き住民ベースコホート研究であるロッテルダム研究のデータを解析し、脈圧が頸動脈におけるプラーク内出血(IPH)の存在を示す最も強い血圧指標であることを明らかにしたIPHは脳梗塞と関連するアテローム性動脈硬化の特徴であるが、これまでその決定因子は判明していなかった。
報告者らは「拍動流とIPHとの関連は、不安定プラーク(vulnerable plaque)の発現に関する新しい知見をもたらす可能性がある」としている。
■本研究は、MRIで評価した頸動脈プラーク内出血の最も強い血圧関連規定因子が、脈圧であることを示した高血圧性血管障害の病態生理を考える上で重要な論文である。
■本研究で、プラーク内の出血は頸動脈プラークの25%程度と高頻度に見られている。
これまでの研究では、頸動脈プラーク内の出血の存在は、不安定なハイリスクプラークを意味し、より脳血管疾患のリスクが高いことが報告されている。

■本研究では、血行動態の拍動性血圧成分である脈圧が、収縮期血圧や拡張期血圧、平均血圧などの絶対値よりも強いプラーク内出血の規定因子となった。

■つまり、本成績を説明する機序としては、脈圧による血圧の拍動成分や、さらに付随する血流の拍動による「ずり応力」が、既に存在する頸動脈プラークにメカニカルストレスをかけて、プラークを不安化させ、その内部に出血を生じさせたと考えられる。
([監修] 自治医科大学 循環器内科 教授 苅尾七臣)


<私的コメント>
脈圧に関しては論文の内容から年齢補正がしてある。
しかし、脈圧の増加が動脈硬化、特にstiffnessと関連していると考えるなら、この結果は当然ともいえる。
すなわち原因なのか結果なのかも分からないことになる。

2013年2月8日金曜日

ISAR-LEFT MAIN 2試験


非保護左主冠動脈主幹部病変を有する患者の転帰はZESとEESで同等
非保護左主冠動脈主幹部(ULMCA)病変を有する患者において、第2世代の薬剤溶出性ステント(DES)であるゾタロリムス溶出性ステント(ZES)とエベロリムス溶出性ステント(EES)を比較したISAR-LEFT MAIN 2試験が、ドイツとイタリアの3施設で行われ、「転帰は同等」との結果が示された。
ドイツ心臓センターのJulinda Mehilli氏が、2012年10月、米フロリダ州マイアミで開催されたTranscatheter Cardiovascular Therapeutics(TCT2012)で報告した。


2013年2月7日木曜日

ACE阻害薬の代表的な臨床研究


ACE阻害薬の代表的な臨床研究

1.総死亡率の低下
COSENSU (1987)
SOLVD-TREATMENT (1991)
V-HeFT Ⅱ (1991)
SAVE (1992)
Hy-C (1992)
AIRE (1993)
SMILE (1995)
TRACE (1995)
ISIS-4 (1995)
HOPE (2000)
X-SOLVD ( 2003)
ADVANCE (2007)
HYVET (2008)

2.疾患治療に大きな影響
HYCAR (1995)
TREND (1996)
AIPRI (1999)
ATLAS (1999)
REIN (1999)
PROGRESS (2001)
AASK (2002)
ANBP2 (2003)
EUROPA (2003)
BENEDICT (2004)
ASCOT-BPLA (2005)
ACCOMPLISH (2008)

    (国際医療福祉大学三田病院 内科 佐藤敦久部長)
出典 Medical ASAHI 2013 February


2013年2月5日火曜日

スタチンと食道がん


スタチン使用で食道がんリスクが30%低下
 
■スタチン使用とがんリスクとの関連はしばしば議論されるテーマとなりつつある。
最近では,がん関連死亡率の減少につながるとの報告などもあるが,こうした結果については慎重に受け止めるべきとの意見も多い。

■米メイヨークリニック消化器・肝臓病科のグループらは,スタチン使用と食道がんとの関連をメタ解析により検討。
「スタチン使用群では食道がん発症率がスタチン非使用群と比べて約30%有意に低く,この傾向はとりわけ,バレット食道患者の食道腺がん発症に関して顕著であることが示された」と報告した。

出典  MT Pro 2013.2.1
版権  メディカルトリビューン社

2013年2月4日月曜日

ACCとAHA 急性冠症候群・冠動脈疾患の基本情報を統一


急性冠症候群・冠動脈疾患の基本情報を統一へ,その目的は?

■ACCとAHAは1月28日,急性冠症候群(ACS)と冠動脈疾患(CAD)の研究や臨床上重要な基本情報および定義の標準化を目指すと発表した。

■公表された基本情報・定義集では,患者背景や治療内容,予後などの情報が7つにカテゴライズされている。
ACCによると,標準化は臨床研究の分野だけでなく,電子カルテへの導入による日常臨床での適用も想定したものだという。
なお,編纂には米国救急医学会や米国胸部外科学会,救急看護師や救急救命士の団体も協力している。

◎ 規制当局メンバーも参画
■定義集は,米国および各国のACSレジストリーやこれまでの各種臨床試験で使用されているデータに基づき作成された。
さらに,米食品医薬品局(FDA)のメンバーも参画し,薬剤やデバイスの評価に用いる主要な項目とのすり合わせが実施された。ACSとCADに関する基本情報の概要は次の通り。

1. 患者情報:性や生年月日,人種,入院紹介のソース,健康保険のタイプなど
2. 既往と危険因子:狭心症や心不全の既往,バイパス術歴,各種動脈硬化性疾患の有無,インフルエンザや肺炎球菌
 ワクチンの接種歴など
3. 臨床所見:症状が発現した日時,心拍数や初回受診時の収縮期血圧,身長・体重など
4. 診断方法:心電図および初回心電図の実施場所,LDLおよびHDLコレステロール値や血糖値など
5. 侵襲的治療介入:植え込み型除細動器(ICD)のタイプや非侵襲的ストレステストの実施日,ACS責任病変,左冠
    動脈主幹部の狭窄度など
6. 薬物療法:使用した抗凝固薬の量,発症24時間以内のβ遮断薬の使用,退院時のアスピリン処方の有無など
7. 予後:入院中の死亡,再発,出血に関する情報(TIMIやGUSTO分類,出血箇所など)あるいは外科治療の有無,
   退院時の状態(自宅,多施設への転院)ほか

◎研究,臨床現場のプラットフォーム共通化で患者の予後改善を目指す
■ACCはこの定義集を,臨床研究や患者登録システム,構造化レポートの他,電子カルテに適用することも視野に入れていると説明。
 
■従来,臨床あるいは研究の場において異なる使われ方をしてきた基本情報や定義を共通のプラットフォームとすることで,多くの研究や患者レジストリー間の比較検討や,病院や地域,国など異なるレベルでの診療の質評価が容易になるなど,多くのメリットが期待できる。

  さらに,臨床試験と実地臨床の乖離の解消や,心血管疾患患者の予後の改善が期待される。


出典  MT Pro 2013.1.31
版権  メディカルトリビューン社